Five Minutes
いつもならやや空いているハズの電車が、今日に限ってメチャ混みであることにムカッときているところへコレですから、俊次くんの顔が険しくなるのも無理ありません。
やがて俊次くんを乗せた電車は、俊次くんを人体による360度の圧迫攻めにして走り出しました。
立錘の余地も無いとはまさにこのこと、足が床についていることが奇跡です。
(暑い…)
しかも車内は、人体から発せられる熱気でサウナのよう。
額から汗が流れ出てきても身動き一つとれないのですから、ポケットからハンカチを取り出すことも出来ません。
でも、五分後には到着する次の駅までの辛抱だ。どうせ俺はそこで降りるんだから、ガマンガマン。そうさ、長い人生のなかの、たった五分間…。
自分にそう言い聞かせていた俊次くんは、頭と頭の間から、さっき足を踏んづけて行ったオッサンがいるのを見つけました。
(ちっくしょう…)
後でぜってぇに足踏んで仕返ししてやっからな…。 俊次くんはオッサンをキッと睨み付けました。
しばらくすると、スピードを上げて快調に走っていた電車が、どうしたことか途中から徐行を始めて、ついには停まってしてしまいました。 (え、なに…?)
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