分け合う秘蜜





「先生の教え方が、
あたしにとって
わかりやすいんだよ」


唇を尖らせて精一杯のアピール。

お願い、気付いてって。


「海智は本当に
いい奴だよな…」


あたしの頭を撫でて、
あたしが手にしていた
プリントをスッと手から
引き抜いて。


少し触れた指先に、
すごくドキドキする。


あたしよりも大きな手が、
少しでも長い時間
触れていてほしいと思う。


だから、早く気がついて。


せめてなんで海智は
自分のところに苦手な数学ばかり
聞きに来るんだろうとか、
疑問に思ってよ。


あたしだって、脈のない男
いつまでも追ってて
満足できるほど、
子供じゃないよ…。



「あー…、俺も昔
これ嫌いだった。
ていうか
解けなかったんだよなー」


昔を思い出したように、
苦笑いを浮かべて。


頭を掻いた先生は、
なんだか遠く感じて
すごく嫌。


埋められない歳の差と、
過ごした環境の違い。

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