空の神衣
「ふん、つまらん茶番もいい加減にしてもらいたいものだ」

 アガートラームは露骨に不機嫌な表情で、剣に籠手を走らせる。

 すると、刀身が透き通り見えなくなる。

「どれ、私も本気を出すとしようか」

 言うが早いか、横薙ぎに剣を振るう。

 殺気を感じた津也が床を蹴って跳ぶと、その下を突風が吹き抜ける。

 ただの風ではない。

 明らかに届くはずのない間合いを、不可視の刃が擦過したのだ。

「この質量、剣が伸びたのか。変わった芸を持ってるな」

 トッ、と降り立ち、津也は事も無げに言う。

 闇珠の力を吸収したことにより鋭敏になった津也の視覚は、見えない刃が起こす気流を捉えていた。

「ほう、今のを見切ったのか」

 さして驚いた風でもなく、アガートラームは再び剣を構える。
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