君が為に日は昇る
━こいつ…!


攻勢を続ける夜太の額に大粒の汗が光る。彼は次第に焦りを感じはじめていた。


陸野の纏う雰囲気。凡百の剣士では無いことはわかっていた。


それでもここまで。


━ここまで斬撃が当たらないものなのか…!


放つ斬撃はことごとく避けられ、その度に風を斬る音が虚しく響く。


━それも…!


陸野は一切刀を使っていない。つまりその体捌きだけで斬撃をかわしているのだ。


上段中段下段。上下左右。様々な角度から放つ刀。
もう何度刀を振るったことか。


それでも一度たりとも斬撃は当たらない。空を斬るばかりだ。


それどころか、陸野は未だに一撃すら放っていない。依然として観察するような視線を投げ掛け、笑みを浮かべるばかりである。


━くそ…!くそっ!くそくそくそっ!


焦り。苛立ち。それが徐々に剣が乱していく。


━青いな。この程度で崩れるか。


そして陸野が刀を動かした。





━何が起こった?


夜太の意識は混濁としていた。


陸野が放ったのは単純な水平斬り。それを夜太は刀で完全に受け止めたはずだった。


━それなのに、何故俺は倒れている?
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