中絶~僕は君を殺したい~
ロスト
4‐1 はしる





デートをキャンセルしなければならなくなったのは一本の電話だった。




「もしもし、近藤くん」




「…はい」



頭が痛くてたまらない。知っている声。藤田さんだ。



「休みのところ悪いけどすぐに来て」



「どうかしましたか?」



「どうかしたかじゃないだろ!早くこい」



どなり声が受話器からぼくの耳になだれこんでくる。



返事をしながらぼくは服をきがえはじめた。



電話を切るときにはすでに部屋にカギをかけるところだった。



…あぁ頭がいたい。



走ったのはほんの数メートル。一つ目の電柱をこえるときには歩きだし、あきに行けなくなったとメールを打っていた。




「…めんどくさいな」


そのまま足を止めて帰ろうかとも思った。



二十分後。



ぼくはしせつの前についていた。
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