中絶~僕は君を殺したい~
13‐3 父親



あきはみちがえるように元気を取り戻した。


両親もあきが出産することをみとめた。



どうじにゆうやからいつきが離れていった。


父親になればいつきのそばにいられる、と思った。



「いいよ。そんな一人でも大丈夫だから」



「大丈夫じゃないよ。生活もしていかなきゃならないんだし、もう少し甘えろよ」



好きだ、結婚してくれ、が言えない。



あせりはつのるばかりだ。



断られることもある。


でも再婚さえしなければいい。



シングルマザーでいてくれれば、と思ってしまう。



ゆうやはいつきのそばにいたい一心であきに尽くした。



あきがゆうやは優しい、と言う度にちがうんだ、と返したくなる。


こんなにもうそがつらいとは思わなかった。


ひみつの方がつらくない。



ゆうやは手を伸ばしてあきのお腹をさすった。
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