君の手を繋いで
雨の命日

何もできないままに、八月十日になった。


兄貴の命日。

そして、日向の誕生日。


今日は、一年前と同じように、雨が降っていた。


兄貴の墓参りに行く予定だったけど、この天気だから、また今度にしようってことになった。


俺は、何もする気にはなれずに、ベッドに横になっていた。



あの日以来……日向に腕を振りほどかれて以来、顔も合わせていない。


日向が距離をとっているということもある。


でも、あの夢を見てしまってから、俺の方も会いづらくなってしまった。


あの夢が、本当のことかは分からない。

だけどもし仮にあれが本当のことだとしたら……


俺の日向へ対する気持ちは、もうとっくにバレてしまっていたということだ。


俺は知らなかったから、隠してるつもりで普通にやってきたけど、日向にとってはそうじゃない。


だから、兄貴が死んでから、よそよそしくなったわけで……



……ん?

なんかおかしくないか?


俺は体を起こして頭をちゃんと働かせようとする。


あの夢が本当のことだとしたら、兄貴が日向に俺の気持ちを言ったのって、二人が付き合う前だろ?


だから、二人が付き合ってる時にはもう、日向は俺の気持ちは知ってたはずだ。


でも、兄貴と付き合ってた時の……兄貴が生きてた時の日向は、俺に対しても普通じゃなかったか?

俺が、日向が俺の気持ちを知ってるなんて、分からないくらい……


やっぱり、日向の態度が変わったのは、兄貴が死んでからだ。


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