この胸いっぱいの愛を。



「少し染みるかもしれないが、
 我慢してくれ」

将兄がテニスバッグから取り出したのは、
まだ開封していない消毒液。


「念のためにと思って最近買ったんだが…
 こんなに早く使うことになるとは」

将兄はそう呟いて、
私の膝に消毒液を浴びせた。

続いて絆創膏を手に取り、
患部に貼り付ける。




……一連の作業の間、私はボンヤリ将兄の横顔を見つめていた。


将兄は、本当に整った顔付きをしている。


凛々しい眉、
切れ長で透き通った瞳、
スッと通った鼻筋、
薄い唇───……


とにかく、文句の付けどころがない。

“イケメン”って言葉は彼のためにあるんじゃないかって思うくらい、めちゃくちゃカッコ良いんだ。


でも、将兄を“イケメン”と思ってる人は、
多分あまりいない。

ひょっとしたら、私だけかもしれない。


将兄の性格がそうさせるんだと、
私は考えている。

もっと愛想が良かったら、
絶対ファンクラブとかできるはずだもん!

愛想が悪いから、女子も男子も怖くて近寄れないに違いない。


『下手なこと言ったら殴られそう』とか、
クラスの女子が話してたし。


そんなに、野蛮な人じゃないんだけどなぁ。




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