この胸いっぱいの愛を。
「…よし、こんなものだろう」
将兄の声で我に返った私。
膝にはしっかりと、絆創膏が貼ってある。
「桃香、立てるか?」
「うん、大丈夫」
差し出された将兄の左手を、
しっかりと掴んで立ち上がる。
大きくて骨張っていて、男の子なんだなぁと改めて思わずにはいられない。
ところどころに見られる傷やマメは、
毎日過酷な練習をしている証。
「ちゃんと歩けるか?」
立ち上がっても、
将兄は私の手を離そうとしない。
「全然平気!!ほらっ」
私がその場でジャンプしてみせると、
ようやく手を離してくれた。
「将兄って、見かけに寄らず
かなりの心配性だよね」
思ったことをそのまま口にすると、
将兄はフリーズしてしまった。
………やばい、怒らせた?
「っ、妹を心配するのは、
兄として当然のことだろう」
───ほら、早く行くぞ。
私に背中を向け、返事を待たずにスタスタと歩きだす将兄。
「あ、待ってよ将兄!!」
……さっきの「間」は、何だったんだろ。
そんな疑問を抱えたまま、
私は将兄の後を追った。
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