この胸いっぱいの愛を。



将兄が、本当に見てる人?


それって、好きな人ってことだよね?




…………知らなかった。


将兄に、好きな人がいたなんて。




「凄いですね、先輩。
 私、妹なのに……」

妹なのに、全然気付かなかった。


私が感心して言うと、先輩は一瞬不思議そうな顔をして、自嘲気味に笑った。


そして。




「お前だから、だと思うよ?俺は」


と、意味深な言葉を口にした。




……私だから、って、どーゆーこと?


訳が分からなくて、首を傾げる。




「ま、その内わかるって!」


そう言って笑った先輩の顔には、いつもの笑顔が戻っていた。

その笑顔を見て、私はホッとした。


先輩、ちゃんと笑えてる。


「先輩が復帰するの、待ってますから」

「おぅ、サンキューなっ!」




先輩がいないと、なんか寂しいし。


それはさすがに言えなかったから、心の中に仕舞っておいた。






それから私達は、他愛のない話で笑いあって……


八時を過ぎる頃に、家を出た。


先輩のお母さんは、私に「いつでも来てね」と言ってくれた。

その時の笑顔が、先輩と重なって……


やっぱり親子だなぁ、なんて思った。




.
< 160 / 196 >

この作品をシェア

pagetop