この胸いっぱいの愛を。
ポチャン。
間の抜けたような音がして、
将兄が箸で挟んでいたじゃがいもが
味噌汁の中に沈んでいった。
「え……どうしたの?」
私、何か変なこと言った?
「おいおい将、お前、どーしちゃったの?」
祐兄も口にご飯を頬張ったまま、
不思議そうに将兄の顔を覗き込む。
「あ……いや、何でもない。
では、俺は先に部屋に戻ってるぞ」
「……?じゃあ食べ終わった行くか…ら」
私が最後まで言い終わる前に、
将兄は部屋に行ってしまった。
………どうしたんだろ、将兄。
私、怒らせるようなこと言ったかな?
それとも、忙しいのかな?
だったら、断っても良かったのに。
「桃香、そう考え込むなって。
将にも、色々あるんだよ」
「色々?」
「そう、色々」
祐兄はニカッと笑って、
私の頭をポンポンと叩いた。
色々って何だろう?
にしても………
祐兄には、何でもお見通しなんだね。
「ほら、将んとこ行ってきな」
「……うんっ」
私は祐兄に背中を押されて、
将兄の部屋に向かった。
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