この胸いっぱいの愛を。





「じゃあ、今度の日曜日ね!
 楽しみだなぁ〜♪」

「そう、ですね」




結局紗耶香先輩は、大会直前のため午前で部活が終わる日曜に、家に来ることになった。


………桃香は、日曜何か予定があるのだろうか。

もし、何もなくて家にいるとしたら……


先輩と、鉢合わせになる。




彼女を見て、桃香は何と言うだろう。

紗耶香先輩のことを、直接彼女に言ったことはない。

だが、俺に恋人ができたことは、噂で聞くなりして知っているはずだ。






……本当は“おめでとう”なんて言葉、聞きたくない。


本当に好きな人から祝福されることそれ自体が、眼中にないと言われることに等しいのだから。




桃香にとって、俺は“兄”であって、“男”ではない。


それを改めて認識させられると思うと、キリキリと胸が痛んだ。




「日曜日が待ち遠しいな」


心底嬉しそうな顔の先輩。

その笑顔を無意識に妹のそれと重ねてしまう自分は…………






やはり、最低だと思った。




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