この胸いっぱいの愛を。
〜桃香side〜
「最低だ、私……」
呟いた言葉は、真っ白な天井に吸い込まれるようにして消えた。
「風邪引いたくらいで最低だなんて、大げさだな〜桃香は」
笑いながらそう言って、祐兄は私の額に乗せていたタオルを外した。
そして今度は、タオルの代わりに祐兄の手が額に当てられる。
「どうだ、少しは体調良くなったか?」
柔らかい笑みを湛えて微笑む祐兄と目が合い、私はコクリと頷く。
「うん、だいぶ良くなった。
ありがとね、祐兄」
――――――――――今朝。
まだ重い瞼を開けてベッドから起きあがると、自分の意識がいつも以上にぼんやりしていることに気付いた。
寝起きだからとか、そんなんじゃなく。
それに加えて、一歩踏み出した途端に頭に走った、鈍い痛み。
更には平衡感覚までおかしくなったのか、まともに立っていることもできなくなり………
気が付くと私は、出たばかりのベッドに再び倒れ込んでいた。
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