この胸いっぱいの愛を。



私は、お父さんとその不倫相手との間にできた子供。


私が幼稚園に通う直前までは、
お父さんは家族に隠して、
不倫相手──私の本当のお母さんと
なんとか私を面倒みていたらしい。


でも、私のお母さんは、ある日突然交通事故に遭って死んでしまった。


お父さんは家族に隠して私を育てるのは無理だと悟り、事情を説明して、私は神田家に引き取られることになったってわけ。




そういう事だから、私は将兄と祐兄とも実の兄弟ではない。


一応お父さんは一緒だから、
異母兄弟ってことになるかな。


そんな複雑な事情もあるけど、
私は神田家に来れて良かったと思う。


お母さんも、私が別の人の子供だと知っていても分け隔てなく愛してくれるし、


将兄も祐兄も、私と仲良くしてくれる。


実のお母さんの記憶がないのは残念だけど、今の生活には、とても満足してるんだ。




写真に映ってる私達は、みんな笑顔だ。


手を繋いでる将兄と私。


その後ろに立って、
私達の頭に手を乗っけている祐兄。


三人の関係は、今も昔も変わらない。


少なくとも私は、そう思ってた。


警告の鐘が鳴り響いてることに、
気付いてなかったんだ───……。






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