この胸いっぱいの愛を。



だから、家で会った時も何話していいかわかんなくて……


将兄が勉強もちゃんとしてることわかってたのに、余計なこと言っちゃったりして。


そこまでしてでも、何か話さなきゃって思ったんだよね。

あのまま何も話さないで、どんどん溝が深くなるのだけは嫌だったから。


あんな生意気なこと言って、余計に嫌われたかもって一瞬不安になったけど、将兄は「ありがとう」って言ってくれた。

途切れ途切れだったけど、嬉しくて涙が出そうになった。

大袈裟だと思われるかもしれないけど、ホントに嬉しかったんだ。


それだけ、私の中で将兄は特別な存在だから。




その次の日から、私達はまた一緒に登校するようになった。

将兄の隣にいれることを、あの日ほど嬉しく思ったことはない。


同じ歩幅で、他愛のないことを話しながら並んで歩く通学路。


将兄が私の話を笑顔で聞いてくれていることに、安心した。




あの時の涙の理由は、まだわからない。


でも、決めたんだ。

私は私なりの方法で、将兄の力になろうって。

泣いていた理由が、私にはどうにもできないことだとしても………




私にできることは、“0”じゃないはずだから。




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