この胸いっぱいの愛を。





【あなたに、伝えたいことがあります。


今日の午後一時に、体育倉庫の近くでお待ちしております。


必ず、一人でいらしてくださいね。】




「……これだけ、か?」

手紙は思っていたよりも短くて、あっさり読み終えてしまった。


果たし状とは、こんなものなのか。

俺は勝手にそう解釈して、その便箋を封筒に元通りにしまった。


…………一人で来い、となると。

正々堂々、一対一で勝負しようというわけだな。

最近は部活が休みで、自主練はしているものの、体が鈍っているからな。

少しは、骨のある相手だと良いのだが。

敵は強ければ強いほど良いからな。




まだ見ぬ果たし状の送り主について色々と考えていたところで、俺は大事なことを思い出した。


テストが終了するのは、12時半。

それから30分後に体育倉庫に向かうとなると……


「桃香には、先に帰ってもらうか」

本当は一緒に帰る約束をしていたのだが、こればかりは仕方がない。

日にちを変更してもらおうにも、送り主がわからないとどうしようもないからな。


俺は桃香と帰りを共にできないことを残念に思いながらも、そのことを伝えようと彼女にメールを送った。




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