この胸いっぱいの愛を。



 〜将一郎side〜




「………何だ、これは」


桃香と別れてから真っ直ぐ教室に向かい、自分の席に腰を下ろした時。

いつも空にしてから帰っているはずの机の中に、一枚の封筒が入っていることに気が付いた。


どこにでも売っていそうな、真っ白い封筒。

ひっくり返してみても、何も書いていない。


もしや、これは…………






「果たし状、か?」

本物を見たのは、これが初めてだ。

この御時世にこんなものを書く奴がいるとはな。


にしてもこの俺と直接対決しようとは、なかなか勇気のある奴だな。

一体何の勝負だ?

空手、柔道、剣道、弓道………


まぁ、良い。

どんな勝負でも、受けてたってやろうではないか!

俺は負けないぞ……絶対に!




深呼吸をしてから、勢い良く封筒をちぎる。

勢い余って中身も少しだけ損傷したが、読めないほどではない。


入っていたのは、縦書きの便箋が一枚。

こちらも封筒に負けず劣らず殺風景だ。


その便箋の最初の行は、こういう言葉で始まっていた。




【拝啓 神田将一郎様】




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