この胸いっぱいの愛を。





少し照れながらも真剣な目付きで語る速見くんは、凄く男らしく見えた。


「今は、神田さんの足元にも及ばないけど……」

机の上の小さな拳が、血が滲むほど強く握り締められる。


「死ぬ気で練習して、めちゃめちゃ強くなって、いつか同じコートに立てた時には……」


立てた、時には………?








「絶対に、勝ってみせる。
 ……それが、今の俺の目標です」

ふんわりと、柔らかく笑う速見くん。

……この笑顔が、誰かに似てる。


確か──────………









─────テニスでその人に勝って、俺のことを認めてもらう。


─────それが、俺の当分の目標!




そっか。

似てると思った誰かは、駿河先輩だったんだ。

二人とも、凄く似てる。

笑顔だけじゃなくて、胸に秘めてる思いも。


駿河先輩はその相手が“好きな人”らしいんだけど。


先輩の好きな人、どんな人なのかな?

女の人で先輩よりテニス凄いなんて、相当な実力者だよね。

うちの学校では、なさそうだな。




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