砂漠の王と拾われ花嫁
「んっ……み……ず……喉が渇いた……」

眠りから目覚めた莉世は、次の瞬間ハッとして起き上がり、辺りを見回す。

「……ここはどこ? なんで自分の部屋じゃないの? 嘘っ! 夢じゃ……」

突きつけられた現実に、莉世の目から涙がこぼれる。

ここは自分の部屋ではなく、汚い六畳ほどの部屋。ごつごつした石の床に莉世は寝ていたのだ。

なにかが腐ったような悪臭がどこからか匂ってくる。湿度が高く、むわっとした熱気が身体を取り巻き、不快としかいいようがない。

身体をゆっくり起こすと、乾いた咳が出る。口の中がカラカラに渇いていた。

それでもあの砂漠よりはマシなのかもしれないと思えるほどの余裕は、今の莉世にはない。

石の床と鉄格子。小さな窓がひとつだけあり、あとは壁。

「なんで……鉄格子……? まるで牢屋みたい……もういやだ……」

フラフラする頭を膝の間に埋める。

(お父さん……お母さん……わたしはいったいどうしちゃったの?)

肩や腕、顔までもがヒリヒリして痛い。莉世は唇に指をやった。なめらかだった唇はガサガサで、そこから滲んだ血が指に付いた。

「なんでこんなことになっちゃったんだろ……」

いくら考えてもわからず、まだ夢であってほしいと思っている。

「うっ!」

胃に不快感を覚え、胃液が上がってくる感じがして、莉世は苦しさに嗚咽を漏らす。

(ううっ……気持ち悪い……吐きそう……)

頭を金づちで叩かれているような頭痛もしてきた。徐々に襲う身体の痛みと吐き気に、莉世は不安になる。

うずくまっていることが苦痛で、石の床に膝を抱えたまま倒れる。薄れていく意識。

(誰か助けて……)

莉世はそんな自分に恐怖を覚えながら、目を閉じた。

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