アタシ

崩壊

 そんな気持ちはそう長くは続かなかった。
 夜、トイレに起きると親の寝室から漏れる声。アタシの話をしていた。
「専門学校へ行かせてあげたいけどお金がない。だけどいつも仕事で家にいることが少ない分、できる限り欲しい物は買ってあげたい。」
 全身から力が抜けた。そうだったんだ、アタシがあれこれ欲しいだなんて無理なワガママを言って買ってもらってたけど、実際厳しかったんだ。
 気が付いたらあたしは携帯を片手に、あの出会い系サイトでエンコーを募集する投稿をしていた。もうがむしゃらだった。何が何だかわからなかった。とにかく親に楽させたい、そう思った。何十件、というメールがアタシの元に届き、条件のいい男にだけ返信をした。
 その条件のいい男、の一人がサトシだった。金額がいいとかではないけど若い。20歳。オヤジとやるよりはマシだ、と思った。
 早速アタシはサトシと会った。サトシは凄くダサくてボロい軽四で迎えに来た。顔はそこそこ、といった感じだ。アタシはすぐに車に乗り込み、サトシの家に向かった。
「彼氏とかいんの?」
「いない。」
「ユミ、何かノリ悪いね。」
ムカっとしたが金のため、と思って堪えた。サトシはアタシを「体を売る安い女」と思っていたのだろうか、すごく人を見下した目をしていた。
 
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