音楽バカ
あれから基礎練の強化、腹筋・ジョギングの実施、挨拶の練習など今までよりも厳しい練習の日々が続いた。
一曲くらい正当なクラシックもやろうという事で前回の総合学芸発表祭で演奏した[チェスフォード・ポートレート]を練習した。
練習には部員全員熱心に取り組んだ。
この部はふざけるのも全力だが音楽を愛するのも全力だった。
菅波は少し外部指導がくる話を聞いたときに、不安になっていた。
大丈夫なのだろうか?
いや大丈夫だ、きっと。
―「いよいよ明日外部指導が来る。」
菅波の言葉にみな黙ってうなずいた。
「その人がどんな人でも俺たちはついていこう。
今日は以上。
各自明日に備え、体調管理はしっかりと行うこと。
お疲れさまでした。」
「「ありがとうございました。」」
部員全員が礼をしたその時、希良は見逃さなかった。
石橋が一瞬よろめいたのだ。
「だいじょぶ?」
希良が顔をのぞき込んだのに一瞬、石橋は焦点の合わない目で宙を見つめた。
「んあ、悪い。
受験勉強のストレス……」
あ…嘘ついてる。
見破ったけれど家の事情だと悪いから希良は深く突っ込まなかった。
「宮路、明日のことなんだけどいいかな…」
「あぁ…はいはい。」
希良は菅波に呼ばれて石橋から離れた。
「……やべーなぁ……。」
石橋は独りごちて楽器をしまった。