。☆゜星空゜☆。


帰り道、あたしは家まで歩いた。


前にも翼の家まで歩いたことがあったけど、そのときはそんなに長くは感じられなかった距離が、この日はとてつもなく遠くに感じた。


力が入らず、それでも歩いた。一生懸命歩いた。


夢も希望も、未来も、幸せも、愛も、いっぺんに失ったあたしは、もうただの抜け殻だった。


ただの動く人形のようだった。


家の近くの商店街に着いたとき、足を止めた。カメラ出さなきゃと思い、いつも現像に出すお店に入った。


「あら~っ!流奈ちゃん、久しぶり~!!」


 おばちゃんに笑顔で会釈した。


「……流奈ちゃん?」


 あたしは黙って、バッグからカメラを出した。


「どうしたの? なにがあったの?」

「えっ!?」

「流奈ちゃん、変よ?」


あたしはびっくりしているおばちゃんに笑いかけて、「お願いします」とだけ言って店を出た。



家に帰ると、お母さんが「流奈! あんた、いままで一体、どこ……」と怒鳴ろうとしたけど、


目が合った瞬間、お母さんはそれ以上なにも言わず、黙ってるあたしを見つめていた。


「疲れたから……、少し寝る」


そう言って部屋にこもった。


地元も、あたしの家も、なにも変わってなかった。


翼がいなくなっちゃったのに。


時間は普通に過ぎて、みんな普通の生活をしている。


あたしの愛した翼がこの世からいなくなったのに、なにも変わらない世界。


あたしはその日、ボーッと部屋で過ごした。なにもする気にならず、ただボーッ……と、過ごしていた。


夜になってお母さんが声をかけてきた。


「流奈……、ご飯よ? こっちおいで」 


いままでになかったような優しい声だった。


「……いらない」


そう返事をすると、お母さんはご飯をお盆にのせてきて、部屋のドアを少し開けて置いた。


「食べなきゃ、元気にならないから」


それだけ言い残し、部屋を離れた。


食べてもね、もう元気なんて出ないんだよ……。


あたしはベッドに潜りこんだ。






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