*あたしの好きな人*
式が終わり、教室に戻ろうと、
奈々と二人で歩いていた。
奈々は祐介さんを見つけ、
そっちに行ってしまった。
祐介さんがいるってことは‥‥
「柚!!」
突然、大声で呼ばれた。
振り返らなくてもわかる。
この声は‥‥
「‥‥龍。」
「お前どうした!?その顔。」
「‥‥な、なんでもないよ。」
「なんでもないわけあるかよ!言えよ!なんで連絡もしねーんだよ。」
「それは‥‥ごめんなさい。」
「言えねーの?‥‥柚!」
龍はあたしの手をつかんだまま
離さない。
「龍‥‥痛いから‥‥離して?」
「あ、わりぃ。」
龍は手を離した。
そのとき。
「柚ちゃん!」
嫌。
今、来ないで。
「何してんの?」
「お前、この前の‥‥」
「横山雄太です。今柚ちゃんと付き合ってます。」
嫌!
言わないで‥‥
「柚。ほんとなのか?」
あたしは、
何も答えられずに黙った。
「はい。」
代わりに横山が答えた。
「俺は柚に聞いてんだけど。」
龍はあたしを見た。
あたしは耐えられず、
その場から走って逃げた。
「柚!」
「柚ちゃん!」
二人の声が重なって聞こえた。
でもあたしは走った。
今は二人と居たくない。