リューベル王物語
「卒業おめでとう!」
ウェーブのかかった金髪を豊かに揺らしながら、
ピノアは元気よくリクに祝いの言葉を述べた。
ピノアもアカデミーに通う生徒であるが、
卒業は二年先となる。
「ねえ、本当にどこにも行かないつもりなの?リクすごい成績なのに、もったいないよ。」
自宅に向かって歩くリクの横に並んで、
ピノアも歩く。
ピノア・ル・セリウスは、
内務大臣エドワード・セリウスの一人娘である。
リクのバーデンバーグ家とは、
古くから昵懇の仲であり、
家族同然の付き合いをしていた。
お互いの家族が、
お互いの家をよく行き来し、
晩餐を共にすることしばしばである。
そして、
リクの父親とピノアの父親が、
ワイングラスを揺らしながら難しい話をする姿は、
リクとピノアが小さい頃から慣れ親しんだ光景であった。
リクは歩きながらつぶやく。
「秘密基地……」
「えっ?」
「あの秘密基地、まだあるかな?」