SEASON
それを見て数秒悩んだすえ、あたしは陽生に見えるように大きな溜め息をついた。

「はぁ、しょうがないなぁ」

ぱっ、とすばやく顔を上げる陽生。

「それじゃあ…」

「いいよ、歌うよ。でも本当に救いようのないくらい音痴で下手だからね!」

「大丈夫大丈夫!ありがとう!!」

この時の陽生の喜びようと言ったらこれまでの比ではなかった。

呆然とするあたしの両手を握って勢いよく振る。

まぁ、こんなに喜んでくれるんだったらいいかな。

…でも本当にあたしが歌えるのかな。

それが心配だ…。

足を引っ張らないように頑張ろう。




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