SEASON
「新しく加わったギターの、捺未!」

陽生があたしを指差すから観客の目線が一気にあたしに向いて、恥ずかしくてうつむき加減で軽くお辞儀する。

「捺未は俺らの中で最年少なんだよ。なんてったって今年の春高校に入学したばっかの花の女子高生なんだからな」

そこまで言っていいのと思いながら観客の反応を見ていると、

「かわいー!」とか「お肌ピチピチ羨ましい!」とか、叫ぶのは基本女性の方々。

ここに来る人たちは明らかあたしより年上の方々ばっかり。

まぁ、あたしと同年代がいたら警察とかに補導されそうだけど。

「みんな、よろしくな!」

陽生の話が終わると次の曲に入った。

そこからはあっという間で、途中の記憶があまりない。

覚えてるのは緊張したけど楽しかったとか、音がひとつになってあたしの中を駆け巡った感じとか。

4人で練習してるときよりも人前で弾いてる時の方が快感が大きい。

人前ではあんなに嫌だって言ってたのに不思議。

この感じ、病みつきになりそう……なんてね。
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