フェザールスタの肖像
「お前はワルツで倒れた娘か…?」

私はボソボソとしゃべる銀髪の騎士風の女たらしをマジマジと見るけど、あの肖像画にそっくりで、似てない部分を探してしまう。
あの肖像画程、悲哀はないし痩せてもいない。何というか、あの肖像画より若い感じがする。
私の想像では、もっと落ち着いた大人で…痛みを受けた男で…、なんか違う。
でも、よく似てるから銀の騎士の仮装を選んだの?
でも、ここまで似てるなんて遺伝子レベル。
見つめすぎたのか、ふぃと視線をそらし、
「そんなに珍しいか?私の顔が。」
我慢出来ずに、聞いてしまった。
「良く王族の血筋だとか、フェザールスタの末裔とか言われない?肖像画と良く似てる。」
今度はマジマジと私の顔を見られてしまった。
「末裔とはあまり良い気分はしないな。しかし、間違ってはいないだろう。正当な血を受け継ぐのは私と…」

ザッザッーと窓の外の、木々たちが風に流されて葉音を立てた。
馬にいななきが幾重にも聞こえ始めた。

私と仮装王子はおもむろに窓の外を見た。

「!!!!!!!!!」

数多くの馬にまたがる仮装の紳士淑女達、アスファルトの路は消え、石畳とレンガで組まれた道が馬達の足下に密な模様を表している。
煌々と光っていた電灯の存在は消えうせ、猫のマスクをかぶった少年が馬の足下を照らすカンテラをもっている。
明らかに、違いすぎる時代感。

私が来た道と全然違う!
来た時には見えなかった楕円の噴水がある!!

驚きを表そうとぱくぱくと口を開けても、言葉が出ない。
もう一度、仮装王子を見る。
腰までの銀髪が月光できらめいている。
暗闇で顔の半分が見えないけれど、私をみつめている。
「ひどい格好にしてしまったな。」
つぃと手を伸ばして、左頬の髪を横に流す。
指が頬にふれる。
触れられて、急に怖くなった。
「まさか、本当の王位継承者…なの?」

違うと、そんな訳無いだろう。とバカにしながら答えてくれると思った。

「解ったら、淑女らしく挨拶をしてはどうだろう?私の前では皆が膝をつく。」
見つめる碧眼に宿るその高慢な冷たさに私はゾッと鳥肌がたった。



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