僕のどうしようもない出来事
「じゃあ今日残って、背景の絵完成させといてよね!!」
そんな言葉を残しデフォルメ委員長も教室を後にした。

俺はこう見えてかなり出来た人間なので・・・
模造紙を床に広げるのであった。
そして、俺はこう見えてかなり綿密な人間なので・・・
町の風景の資料を図書室に探しに行くのであった。
そして、俺はこう見えて・・・
コンビニでパンでも買ってこよう。


 カレーパンと焼きそばパン、そしてジュースを買ってきた。
図書室から本を借りてきた。
『フランスの町風景』
シェイクスピアってフランス人だよな?
まあどうでもいいか。
家とかを描いとけばいいだろう。
俺は本を見ながら模造紙に下書きをしていった。

教室には俺意外誰もいない。
帰宅するなり文化部のやつは部活に行ったのだ。
うちのクラスは薄情なやつらばかりだ。
今度小河先生に、このクラスでいじめがあります!と告白しよう。
もちろん被害者は俺で。
しかし、模造紙って何でこんなに大きいんだろうな?
しかもそれを八枚も使うなんて!!
こんなの一人でやる作業じゃないだろう!!??
やっぱり、このクラスでいじ・・・・・・

「手伝おうか?」
か細い声で、すばらしい事を言うじゃないか!
一体どちら様だ?

「・・・川瀬」
そこには川瀬の姿があった。

「一人じゃ大変でしょう?私も手伝おうかなって?」
やっぱり心なしか、か細い声。
・・・・そりゃあんな事があったからな。
やっぱりあれは俺が悪いのかな?

「あ、いや、大丈夫だから!」
手伝ってもらいたいのは山々だが、気まずいのだけは勘弁だ。
ここは丁重にお断りしよう。
川瀬は少し悲しい顔で教室を後にしようとした。
そんな顔と後姿を見ると、胸の辺りがズシリと重たくなった。

・・・やっぱり、こんなの一人じゃ終わらねえよ!悪いけど、川瀬手伝ってくれないか?

そんな言葉を言いたかった。
少しニヤけながら、はにかんだ様に大きな声で・・・
でも器の小さい俺には無理な注文だ。
俺はまた模造紙とにらめっこすることにした。
しかし俺は、模造紙の紙面上に先程の川瀬の顔を見ていた。
胸の辺りがまたズシリと重くなった。

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