また、君に恋をする
「どうしてここに?」


尋ねると、勇人は小さく笑った。


「由紀がこんな時に留学なんてしてられない」


深い悲しみを湛えた瞳で見つめられ、胸がざわめいた。


「…由紀…」


勇人は由紀の顔に手を伸ばしかけてやめた。

怯えたような顔の由紀を見るのが辛かった。


「母さんが呼んでるぞ。
下でお祝いだってさ」


勇人は優しく笑うと部屋を出た。


「…この指輪、お兄さんがくれたんだ…」


思い出したい。

何故だか心の底からそんな気持ちが湧き出していた。

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