私の中の眠れるワタシ

「ねえ、三宅ちゃん。私、家、出ようと思うんだぁ。」

二人でタバコを吸いに、部室の外に出た時、なんの脈絡もなしに、突然そう言った。

「てか、お前、行くとこあんの?」

「一人暮ししてる皆の家、順番に渡り歩こうかなぁ、なんて。」

「て、事は。俺ん家にも、くるのか……。」

「なにさ!迷惑なの??」

始めはふざけて話をしていた私達も、段々現実味を帯びた実行計画に、妙な雰囲気になっていく。

「それでさ。私、荷物を取りに行きたいの。ちょこちょこ取りに帰るの怖いんだ。」

「うん。それで……。」

「だからさ、三宅ちゃんの車、だしてくれないかな。すぐに出てくるから、うちの前で、停めて待っててほしいんだぁ。」

三宅ちゃんは、ごくりと息を飲む。

「お、オレが?……オレも怖いよー!オレの電話番号、お前の母さんに、われてるんだろ?!」

「大丈夫。顔はわからないし。電話きても、出ないで。」


しばらく考えこんでいたが、新歓コンパのパートナーとして、いくつもの飲み会の修羅場を二人で協力してきた私達には、おかしな連帯感が生まれていた。


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