私の中の眠れるワタシ

電話をしてしまった事で焦りだす。
もしかして帰ってくるかもしれない。


息が荒くなる。

額にはうっすら脂汗も滲む。

背中にも、じっとりとTシャツが張り付く。


このまま、部屋をうろうろしていただけでは、
颯生に『人騒がせだ』と、怒られてしまうような気になってくる。


何も起こらないわけにはいかない……。


−−ヤラナケレバナラナイ!


強迫観念だけが、ワタシをつき動かしていた。

行き場を無くし、最終的にワタシは、浴室へとたどり着く。

浴槽の縁に、安っぽいT字ヒゲソリの刃がある。
颯生のものだ。

もしかしてこれでも、と思う。
急に視界が開けるような、明るい気持ちになった。

試す価値はある。いや、昔にも試した事があるから、多少はどうなるか知っている。

今はこれしかない。
急がなくてはならない。



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