私の中の眠れるワタシ

「…お、俺は…!!」

先生が、久しぶりに言葉を発した。

しかし、それは声にならない声だった。

涙で目の周りを濡らし、顔を真っ赤にしていた。


皆は驚き、予想外の面白い展開に目を見開き、一瞬同情するかのような空気を漂わせ、沈黙した。


「中学の頃、勉強が嫌いだった。好きな子と同じ高校を受験して、落ちた。本気になっても、もう遅かった。間に合わなかった。

だから、皆には、部活や、恋や、勉強や、将来……なにかに本気になった時、叶えられる可能性や実力を身につけてほしかったんだ。
英語ができないせいで、叶わなくなる夢も、たくさんあるんだ!
俺が担当してるのは、英語だ。それを全力で教えたくて、なにが悪い?!」

先生の、熱い訴えに、心を打たれる女子もいた。
つられて泣く子や、うつむいて、顔を上げられない子。


先生は立ち上がると、

「今日は自習だ。
悪いけど、今日のお前達に教える気は、ない。」

と言って、出ていった。


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