君との期待値
それでも真っ直ぐ顔を見るのが怖くて俯いてしまった。
少しの沈黙が続き、拓真の優しい声が聞こえた。
「夏弥なら、大丈夫だよ」
聞こえた声は思ってた言葉とは全然違った。
「本気で籠原のこと好きだから。
大地先輩とは違って、両想いだな。
俺は、籠原の悲しい顔より笑った顔が好きだから、だから……」
横を風が通り過ぎる。
拓真が動き出したのだ。
すれ違う瞬間だった。
「明日も明後日も、笑っててくれ」
バッと顔を上げ、振り返った。
拓真はもう背を向けていて距離があった。
私はそんな彼の背中に声をかけた。
「拓真っ」
少年は足を止めたが、振り返らない。