逢いたい時に貴方はいない
「私、結婚するんだよね」


やだ!私…
また嘘ついてる…


もうゴマカシタリしたくないのに……

彼女の事なんて気にしなくていいのに……

(嫌だ!)

彼を もう二度と話したくないのに……


「アメリカにね…
もうすぐ行くんだよね」


彼は目を万丸くしていた。


「彼女…優しくしてやんないとさ。」


(何か言ってよ!)


「多分彼女以上、秋山さんの事好きになれる人いないと思うよ」


何か言ってくれないと私……
どんどん嘘をついてしまう。


傷付きたくない弱さが全て嘘をつかせる。



『玲奈…?』

なんとも言えない優しい表情で私の名前を呼ぶ。


ずっと…
呼んで欲しかった…
その声で。

「だから、彼女の所へ行ってあげないと…」

私の肩を
ゆっくりと抱き寄せた。


『玲奈』

耳元で囁くその声は
私の全身の力を奪う…

「なにやってんのよ!」

僅かに残った力で
彼を突き放した、


「早く彼女の所へ行かないと何があるか分からない…じゃん」


『じゃぁ、どうしてお前は泣いてるんだよ!』


(…え?)

頬に手をあてて
自分が泣いていた事に気付いた。


「やだ…私どうしちゃったの…かな?」

突き飛ばされたままの彼は…黙って私を見つめていた。


「最近疲れてたから……カナ?」

目を反らすように後ろを向いた。




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