俺のココ、あいてるけど。
この日もいつものように帰りが遅くなり、部屋に着いたのは日付が変わってからだった。
これも俺の癖・・・・なのだろうか。
自分の部屋に入る前に、隣の長澤の部屋を見てしまう。
「今日も1日お疲れ、長澤」
そして、決まってドアの向こうの長澤にそう言ってしまう。
あの雨の日・・・・長澤が急いで部屋を出ていった日を境に、俺はなぜか毎日そう言うようになった。
不思議なものだ。
そうすると、1日の疲れがスーッと体から抜けていく。明日も頑張ろうという気になる。
長澤が隣にいるというだけでこんなにも心が休まるなんて、3ヶ月前からは想像もつかなかった。
「もう3ヶ月も経つのか・・・・」
部屋に入ってシャワーを浴びているとき、ふと長澤が働き始めて3ヶ月になることを思い出した。
「初日に泣かせたんだっけ・・・・」
それも今じゃ、何年も前の出来事のように感じる。例えば・・・・10年くらい前のような。
根拠はないが、近い過去のことを“遠い”と懐かしむということ、それはたぶん───・・。