俺のココ、あいてるけど。
 
───「1年くらい前からずっと悩んでて・・・・」

麻紀はそう言っていた。

たった一人で俺との別れをそんなにも前から考えていたんだ。

俺は、それにも気づかなくて、気づいてやれなくて・・・・麻紀を辛い目に遇わせてしまった。


俺の勝手な思い違いかもしれないが、麻紀は俺のそばにずっといてくれると思っていた。

つき合って5年、一緒に暮らし始めて3年目、麻紀を疑ったことなんて一度もなかった。

最高の彼女で、何年か先の未来では最後の彼女にしようと・・・・結婚しようと考えていた。

そのことを口に出して言ったことはなかった。だけど、心は麻紀でずっと前から決まっていた。


完全に男の・・・・俺のエゴだ。

“言わなくても分かっている”

“麻紀は俺を分かっている”

そう思っていた。


「・・・・私、この部屋を出て一人暮らしをしようと思うの。だって、この部屋は誠治との思い出でいっぱいだから・・・・」


止まらない涙を拭って、一生懸命に笑顔を作ろうとした麻紀。

その麻紀の顔が、今でも頭から離れることはない。
 

< 16 / 483 >

この作品をシェア

pagetop