俺のココ、あいてるけど。
 
“やり直せないか”


俺はそう、何度も聞いた。

だけど、麻紀は首を横に振るばかりで、俺の入る隙間もなかった。


「誠治は悪くないの。私が・・・・私がいけないの。誠治は悪くない」


そして“俺は悪くない”と、ただそればかりを繰り返していた。


「・・・・私、誠治のほかに好きな人ができたの。その人は前からよく相談に乗ってもらっていて、去年のクリスマスに告白された」


それを聞いたとき、俺は何も言えなかった。

そのとき俺は・・・・仕事。

日付が変わる時間まで仕事に追われ、部屋に帰った頃には25日は終わっていた。

いつも“仕事、仕事”と麻紀を後回しにしていたんだと思う。

知らず知らずのうちに、そうなっていたんだと思う。


テーブルの上には、俺に宛てたメッセージカードとクリスマスプレゼント。

冷蔵庫の中には、手付かずの大きなケーキといつもより手の込んだ麻紀の料理。

一緒に過ごせなかった、あれが俺と麻紀の最後のクリスマス・・・・。

最後のクリスマスは、楽しい思い出なんて少しもなかった。
 

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