俺のココ、あいてるけど。
 
そう言葉を残すと、恵介は注文の伝票を持ってレジへすたすた歩いていった。

ホットコーヒー2つ、580円。

これが、恵介からの別れる彼女への最後のプレゼント、というところなのかもしれない。

デートはいつも割り勘だったから最後くらいは・・・・なんて。

もう恵介の気持ちを知ることはできないから、本当のところは分からないけど。


「はぁ・・・・」


あたしは深いため息をついた。


恵介とはうまくやっていると思っていたのに、これからもやっていけると思っていたのに・・・・。

そう思っていたのはあたしだけだったと分かって、涙と一緒に恵介への想いが流れていった。

さっきまでは泣いてすがるほど諦められなかったのに、一気に冷めていく気持ちに自分でも戸惑うほど。

追いかけて“もう一度やり直してほしい”とは、なぜか言おうと思わなかった。


どうしてだろう?

あたしの恵介への想いって、こんなものだったの?

・・・・分からない。

ただ、そんな自分がすごく滑稽に思えて、泣いていてもふいに笑いが込み上げたんだ。
 

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