俺のココ、あいてるけど。
 
あたしはさらに縮こまる。

“どれだ?”と聞かれても、もちろんすぐには決められない。

そうすると、登坂さんは困ったようなため息をもらす。


「選べないならいつも俺が飲んでいるのと同じでいいか?」


そして、そう聞くやいなや、いつも飲んでいるというコーヒーのボタンを押した。


「あ、あの、あとでお金・・・・」

「いい。長澤より給料もらってるし。100円くらい別に」

「でも・・・・」

「俺のついでだから」

「・・・・はい」


コーヒーが紙コップに注ぎ終わるまでの間も、あたしはずっと縮こまったまま。

“ついでだから”と言われても、おごってもらう義理もないし、何より理由が分からない。

素直に受け取っていいものなのかどうか・・・・。


「ほら、熱いから早く」

「あ、はい」


そう思っていると、いつの間にかあたしの前にはコーヒーを持った登坂さんと、そんな台詞。

もう断るには遅かった。


「あ、ありがとうございました」

「別に。この前のおわび」

「・・・・」
 

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