俺のココ、あいてるけど。
 
「・・・・長澤?」


なんて、条件反射で疑問符付きの言葉が出たが、本当は長澤なんだとすぐに分かった。

今、一番会いたい人の姿を見間違うなんてことはない。

でも、なぜここに?


長澤が運転席のほうまで近づき、ペコリと頭を下げる。

俺は窓を開けた。


「登坂さんが帰ってきたら、すぐに渡したいものがあったんです。明日まで待てなくて・・・・。待ち伏せしててすみません」

「いや、いいよ」


俺もさっき、長澤が待ってくれている気がしたから。

重なった小さな偶然が嬉しい。


長澤は安心したように微笑んで、コートのポケットから“渡したいもの”をさっそく取り出す。

カサッ、と紙の音がした。


「これ・・・・。モッサ君と会ったとき、最後にもらったんです。登坂さんの分も、って、恋愛成就のお守りなんですって」

「・・・・お守り?」

「はい。傷心旅行させちゃったみたいで。旅先の神社で」

「そうか。悪いな」


なんと言ったらいいのか・・・・嬉しいけれど、申し訳ない。

ちょっと複雑だ。
 

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