友情ループ
 
 「沢本さんっ!」
 私の名前を呼ぶ甲高い声に心臓がはねあがった。
 名前で呼ばれるなんて何年ぶりだろう? そう思いながらとっさに笑顔を作って振り向いた。
 外見だけではなく、性格も明るくしないと、また中学校の生活に逆戻りしてしまうかもしれない。

 「あたし、中本 莉絵! 莉絵って呼んで?」
 莉絵はそういってニコリと微笑んだ。
 「あっ、私……」
 「沢本玲ちゃんだよね! 超可愛いからすぐ覚えたんだ~! 玲って呼んでいいかな? 彼氏とかいるのぉ? てか、いそう~!」

 莉絵は笑った。すごくフレンドリーで、とても可愛らしい子だが、少し答え方を間違えたらすぐに裏切られて捨てられそうだと思った。

 「れ、玲でいいよッ! よろしくね! 彼氏は居ないよ、り……莉絵はいるの……?」
 この歯切れの悪い私の喋り方は中学校の時からの癖だ。
 直さないと……。そう思いながら莉絵に視線を向ける。
 莉絵は、目をぱちくりさせて私を見ていた。

 ……………??

 
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