今日の・・・
 昼休みが終わり、午後の授業を受けるために夕実と二人教室に入ると、またこれ、早速谷君が話しかけてきた。事情を知ってしまった私も色眼鏡で見てしまう。
「さっきはごめんな、昼飯、食べそこねたんちゃうん?」
「ううん、大丈夫。ね?」
夕実は谷君ではなく私の方を見て言った。
「え?あ、うん」
なんだかしどろもどろに答えた。
「今日、学校終わってから空いてる?」
谷君はお構いなしに話しかけてくる。
「今日?え、まぁ・・・・」
「空いてるんやったらまた飯、行こうよ」

 谷君がそう言って、夕実を誘った途端、私は背後に異様な感覚を覚えた。憎しみを抱えた刺さるような視線。
「なに?!」
私は思わず周りを見渡し、教室の入り口に目をやった時、ギョッとした。
 蜃気楼のようにユラユラした白いコートの女がじっとこちらを見て立っていた。いつも目にしている霊たちとは何か違うような気がする。肩より少し長めの巻き髪に、ジーンズに肩からトートバッグを下げている。私たちと同じくらいのその辺にいそうな女だ。まるでこれから授業でも受けに行くような・・・。気付いているのは私だけなのに、その女は私の方は全く見ていない。
見ているのは、谷君と夕実・・・。
「そうか・・・!!」
おばあちゃんの話にしか聞いたことが無くて実際に見るのは初めてだったが、これはまさしく生きているもの、生霊ってモノだった。さっきから感じる違和感はこのせいだ。おばあちゃんはよく言っていた。
「死んだものよりタチが悪い。関わるもんじゃぁないよ」
そしてどうやって見分けるの?と言う私の質問には
「その時になればわかる」
とだけ言っていた。その意味、今まさに感じていた。母親が、体温計を使わずに子供の発熱に気付くように。彼女が彼の浮気に気付くように。
「誰なんや?!」
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