スリー・イヤーズ・カタルシス


おれはだんだん不気味になってきた。



ここは一体どこなんだ。



サヤカちゃんや



この車を運転している男は一体何者なんだ?




おれは眠ってしまっていたから



どれくらい時間が経過したのか



感覚が馬鹿になっていた。



「あの、今何時でしょうか」



おれは思い切って運転中の男の人に声をかけてみた。




すると男の人は



腕時計をちらりと見て



「11時9分です」



と言った。



「あのビルの前を出発したのは何時頃でしたか?」



「気になりますか?」



「ええ……まあ……」



男が何か言おうとしたとき



サヤカちゃんが目を覚ましたので



おれも男もそちらに気が行ってしまい



そのやりとりはそれきりとなった。



平等院鳳凰堂は



平安時代の貴族が



天国をイメージして建てたものだという。



なるほど



じゃあここは



この世の天国なのか?



それとも……





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