スリー・イヤーズ・カタルシス



しかし



とにかく助けてあげないといけない



と思ったから



なるべくおだやかな声で



「大丈夫ですか」



と声をかけた。



今思えば



まったくまぬけな話だよ。



服をぼろぼろにされて



闇の中にうずくまっている少女が



大丈夫な世界があるものか。



少女は小刻みに体を震わせて



返事をしなかった



無理もないことだ。



おれは



「ここで待っててください。服を持ってきます」



と言って



そのビルのすき間を出て



走り出した。



戻ってきたときに



彼女がいなくなっていたら



どうしようと思ったから



おれは全力で走った。



24時間営業の



ドンキホーテに駆け込んで



スウェットの上下を買った。



こうやって言ってしまえば



簡単なように思うかもしれないが



本当はすごく大変だったんだ。





< 8 / 31 >

この作品をシェア

pagetop