きっとここで君に出会うために




「うわっ」


急に腕を引っ張られて、

気がついたらあいつの腕に包まれていた。



ドキドキとかキュンとかそんな感じはやっぱりあんまりしなくて、

ただこの腕が、耳元にかかる微かな吐息が、服越しに感じる温もりが愛しいと思った。



愛しい。



その言葉が1番しっくりくるような気がした。


好きでも愛してるでもない。


愛しい。



そばにいたい。

今感じるこの温もりを手放したくないと思った。



そっとあいつの背中に腕を伸ばしたら、

あたしの頭を抱えてさらにぎゅっと抱きしめられる。


顔が近づいたことで感じたせっけんの香りに静かに目を閉じた。



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