恋の音色
「ーサエさん…」

「え?」



名前を呼ばれ、後ろを振り向くと、母の姿があった。


スーツに身を包み、頬が少しコケている。

きっとまた、これから仕事なんだろう。



「お母様…何のご用ですか?」


母は私に近づき、一枚の封筒を差し出した。


「この封筒の中にはお見合い写真が入っています…目を通しておきなさい」


…お見合い?


「で、でもお母様、私まだ二十歳で…」



「…これは会社の為でもあるんです。あなた一人の問題ではないんですよ…」



ー…。


私は、黙ったまま封筒を受け取る事しか出来なかった…。


母の命令には絶対に逆らえない弱い自分だったんだー…。
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