ストロング・マン


それからの車内の空気は、もちろん最悪で。
静か過ぎるせいでバンドの曲がよく聴こえた。

私が失言をしたのは分かる。でも、本心だった。
だから謝るのもおかしいと思う。尚だって謝られて嬉しいとも思えない。

こんなことを考えているうちに私の家に着いたらしく、車のサイドブレーキを引いた音で我に返った。


「着いたよ。」


「あ、ありがとう。いつもごめんね。」


別れ際何を言うべきか迷っていると、


「じゃあ、またね。」


私を降ろしてすぐに車は発進してしまった。

こんなこと、今までなかった。いつも尚が別れがたくなさそうな感じで。
尚をすごく傷つけてしまったんだと痛感した。


でも、なんて言えばよかった?嘘ついて嫉妬してた方がよかった?
どれが正解なんだろう。



その日の夜はなかなか眠れなかった。


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