ストロング・マン
しばらく会っていなかったこともあり、たわいもない話で盛り上がった。
今日は車だからお酒は飲めないけど、たまにはこんな日もいい。
「そういえば、先週の土曜に偶然高校の同級生と会ってさ。
部活のマネやってた子なんだけど、全然変わってなくてびっくりしたよ。」
「へぇ~そうなんだ!
昔の同級生に会えるのって嬉しいよね。」
・・・ん?尚の返事がない?
おかしいなと思って食事から顔を上げてみると、なんだか元気のない顔をしていた。
「尚?どうしたの?」
不思議に思って尋ねてみると、尚は何かを考えるような表情をしたあと、意を決したような瞳で私を見つめた。
「郁はさ、俺が女の子と二人で会っていても、嫉妬したり、しないの?」
「え、っと…」
私は尚の思いがけない発言に驚いて、すぐ言葉を発することが出来なかった。
何より、自分で気づいていなかったのだ。全く嫉妬していないことに。
隠しても無駄だと思ったため、正直に告げた。
「…うん。今、嫉妬はしてない。」
おそるおそる顔を上げてみるとすごく傷ついた顔をしていた。
しまった。やってしまった。
でも、こんなときですら尚は優しくて。
「わかったよ。とりあえず出よっか。」
優しく微笑んで席を立ってくれた。