ストロング・マン


「郁が別れたいって思った理由聞かせてもらってもいいかな?
ちゃんと気持ち、聞きたいんだ。」


尚の少したれ目な優しい目をみて、しっかりと頷いた。
ここ数週間考えていたことを、きちんと伝えよう。


「私、今まで、好きかも、とか、いいかもと思ったらすぐ付き合ってきたの。だから冷めるのも早くて。
相手に対して不満な所があっても、言わずに冷めて別れてっていうのを繰り返してて。


・・・尚も、そうで。不満とかがあったんだけど、言えなくて。
好きって気持ちがどんどんなくなってたから、連絡も自分からしようとしなかったし、頻繁に会ったりしなかったんだと思う。

それでこの間の、嫉妬しないってことに、あの時気づいて。
もう、これは恋じゃない、好きって気持ちはなくなっちゃったんだって分かったの。

すごく勝手なことを言ってるのは分かってる。私のこと、嫌いになって、憎んでくれていい。
でも、私はこれから変わりたい。
次は絶対、自分も相手も好きなように言い合えて、私が幸せにしてあげられるような恋をしたいって思うの。

だから、私と別れてほしい。」


思いを告げた後も、しっかりと尚の顔を見据え続けた。
ここで目をそらしたら自分の気持ちがくじけてしまいそうだったから。


ふう、と息を吐いた後、尚が薄く微笑んだ。


「俺は弱かったんだよ。
郁が俺のこともう好きじゃないこと、薄々分かってた。
でも郁の口から直接聞くのが怖かったんだ。意気地なしだったんだよ。

ごめんな、もっと早く開放してあげるべきだった。」

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