ストロング・マン
弟と会った次の日、私は尚を呼び出していた。
昨晩は今週は会わなくて済みそうなんて考えていたくせに、という感じだけど、自分の中で答えを見つけることが出来た以上、このままズルズル先延ばしにしたくなかったのだ。
私の家の近くにある公園で話をすることにした。
夕暮れ時とあって、子供たちの数も少ない。
ベンチに腰をかけると尚がカフェオレを差し出してくれた。
もう、私の好みを知り尽くしている尚。こんな些細な幸せが、今はすごく辛い。
「ありがとう。
あのね、ここ最近、ずっと自分の気持ちと向き合って考えてみてたんだ。
それで辿り着いた答えがあるから聞いて欲しいの。
私と、別れてほしい。」
言うと同時に頭を下げて、目をギュッと閉じた。
尚がなんて言うか分からなくて、怖かった。こんなこと今まで感じたことなかったのに。
「…そうくると思ったよ。郁、顔上げて。」
尚の言葉に恐る恐る顔を上げると、泣きそうな顔で微笑む尚の顔があった。